懊悩するボクを見て、おっちゃんは少し困った様に笑った。
「愚痴ってすまねぇな。おっちゃん、何だかお前に申し訳なくてさ…つい、な。」
「申し訳ない?」
「あぁ。こんな可愛い娘を遺して…兄貴は嘸や無念だったろう。代われるものなら、俺が代わってやりたかった。次男に生まれついた自分が、今ほど恨めしいと思った事はねぇ。」
「…おっちゃん…。」
「はっきり言っておくぞ、薙?首座は激務だ。命を削る。兄貴が死んだ直接の原因も其処にある。ありゃあ、ただの心不全なんかじゃねぇぞ。」
ボクは頷いた。
死の前日までの…親父のあの消耗ぶりは、どう考えても異常だ。
まるで…身も心も削り取られる様に、僅かな間に儚くなっていった親父。
その理由が、首座と言う特異な立場にあった所為だと言うのなら…ボクは素直に、それを受け入れよう。
残酷だけど、あの姿を見れば合点がいく。
今までで一番納得のいく説明だ。
「薙。」
呼ばれて──ふと見詰めた先には、おっちゃんの気遣わしげな眼差しがあった。
「俺はお前に、兄貴と同じ苦労を負わせる事になる。叔父として…それはとても非道な命令なんだろう、だがな。首座は、絶対に必要だ。甲本だけの問題じゃないからな。そしてお前には、確かに天賦の才がある。その力を俺達に貸して欲しいんだ。頼む…この大役を引き受けてくれ。」
…そう言うと。
おっちゃんは苦渋に満ちた表情で、太い眉根を寄り合わせた。
非道な命令、か。確かに、そうだ。
今なら、おっちゃんの痛みも理解出来る。
家族の『情』と、一族の『掟』の間で、板挟みになって辛い思いをしていた事が…良く解る。
首座。
首座とは、一体何者なのだろう?
人並の生活や、家族の絆を棄て去る事なのだろうか?
そんな者に…。
ボクは、ならなきゃいけないのだろうか?
「愚痴ってすまねぇな。おっちゃん、何だかお前に申し訳なくてさ…つい、な。」
「申し訳ない?」
「あぁ。こんな可愛い娘を遺して…兄貴は嘸や無念だったろう。代われるものなら、俺が代わってやりたかった。次男に生まれついた自分が、今ほど恨めしいと思った事はねぇ。」
「…おっちゃん…。」
「はっきり言っておくぞ、薙?首座は激務だ。命を削る。兄貴が死んだ直接の原因も其処にある。ありゃあ、ただの心不全なんかじゃねぇぞ。」
ボクは頷いた。
死の前日までの…親父のあの消耗ぶりは、どう考えても異常だ。
まるで…身も心も削り取られる様に、僅かな間に儚くなっていった親父。
その理由が、首座と言う特異な立場にあった所為だと言うのなら…ボクは素直に、それを受け入れよう。
残酷だけど、あの姿を見れば合点がいく。
今までで一番納得のいく説明だ。
「薙。」
呼ばれて──ふと見詰めた先には、おっちゃんの気遣わしげな眼差しがあった。
「俺はお前に、兄貴と同じ苦労を負わせる事になる。叔父として…それはとても非道な命令なんだろう、だがな。首座は、絶対に必要だ。甲本だけの問題じゃないからな。そしてお前には、確かに天賦の才がある。その力を俺達に貸して欲しいんだ。頼む…この大役を引き受けてくれ。」
…そう言うと。
おっちゃんは苦渋に満ちた表情で、太い眉根を寄り合わせた。
非道な命令、か。確かに、そうだ。
今なら、おっちゃんの痛みも理解出来る。
家族の『情』と、一族の『掟』の間で、板挟みになって辛い思いをしていた事が…良く解る。
首座。
首座とは、一体何者なのだろう?
人並の生活や、家族の絆を棄て去る事なのだろうか?
そんな者に…。
ボクは、ならなきゃいけないのだろうか?