苺は冷たく目を眇(スガ)めると、預言者の様にボクを指差して言った。

「真実を知り…過去を知って、初めてアンタの『未来』はある。どんなに辛くても、事実は事実として受け入れなさい。深く考えちゃだめ。あるがままを知り、受け入れるの。継ぐ継がないの判断は、それからよ。」

──『事実』。
その言葉の意味が、重くのし掛る。
こんな現実が待っていたなんて、一体誰が想像しただろう?

頭がおかしくなりそうだ。
なのに、尚も苺は続ける。

「本家の総代衆は、《金の星》以外の首座を認めたくないのよ。直系の薙こそが、首座たるに相応しいと実証し、それを他星一門にも披瀝(ヒレキ)するつもりだわ。逆に云えば…それほどまでに、アンタの潜在能力を高く買ってもいるのよ。」

「潜在能力!?そんなの、ボク知らない!」
「自分で気付いていないだけだよ。」

 祐介がポツリと言った。

「キミの力は本物だ。念じるだけで、骨に霊を宿らせるなんて…行も積まずに、そんな高度な術を遣う行者は居ない。」

「祐介…」

「普通なら有り得ない事を、無意識の内にやってのける──これは『才能』以外の何ものでもないんだ。天性の素質の顕(アラワ)れだよ。多分、キミは甲本家開闢(カイビャク)以来の天才だ。嘘は言わない。僕が保障するよ。」

「困るよ、そんな事云われても!」
「祐介の言うことは本当だぞ、薙。」
「おっちゃんまで──」

「いやな。俺も、祐介から聞いて正直驚いたんだ。本来、行を修めるには、元服の式を済ませた歳から、段階を経て積んで行くもんなんだよ…それをなぁ…。」

 おっちゃんは、マジマジとボクを見て腕を組む。何とも云えない表情だ。

首座代理のおっちゃんまでが、そんな事を言い出すからには、ボクの力は本物なのかもしれない。だが、それを素直に認めるのは恐しい事だった。