「あのー…」
「なあに?」

 勇気を振り絞って、ボクは彼女に話し掛けてみる。

「とにかく…お礼を言わせて下さい。助けてくれて有難うございました。」

「どういたしまして。気分は如何?」
「…絶不調です。」

「でしょうね。もう少し発見が遅かったら、大変な事になっていたわよ?せいぜい感謝してちょうだい。」

「その事なんですが…。実はボク、あまり持ち合わせが無いんです。元気になったところで、御礼らしい御礼が出来るかどうか──」

 可能な限り丁重に、当方の逼迫した財政事情を訴えてみる。金銭的な謝礼を期待しているのだとしたら、生憎、その要求には応えられそうに無い。

 すると女の子は、大きな目をいっそう大きく見開いて、甲高いアニメ声を張り上げた。

「何それ、酷──い!! アタシ達が、お金を請求するとでも思ったの!?」」

「ち、違うんですか?」

「違うに決まっているじゃない!! あなたみたいな行き倒れを揺すろうなんて、微塵も考えちゃいないわ!! 生憎、お金には困っていないの。誤解も甚だしいわよ!」

 そう言うと、女の子は、プウッと両頬を膨らませた。

怒った顔も、文句なしに可愛らしい。