『神子』の人格に支配されていた所為|《せい》で、命令口調になっていた…気がする。

 それだけじゃない。

彼を見ていると、自然に昔の自分の姿が重なって、もどかしい気分になるのだ。

 拗ねて強がって、精一杯虚勢を張っている姿を見ると、つい叱り飛ばしたくなる。どうしてもっと素直になれないんだと、手を差し延べたくなる──。

暗い想いに囚われていた頃の自分を、反芻してしまうのだ。

「嫌じゃなかった…」
「えっ?」

 あまりに唐突に、瑠威は言った。

「嫌じゃなかったんだ、不思議と。歯に衣着せないアンタの言い方とか…突き放した態度とか、それが寧|《むし》ろ心地好く思えた。」

「え──ど、どうして?」

「オレは、いつも『特別扱い』だったからね。周りの連中は、オレに気を遣って、誰も本気で叱ってくれない。『あの事件』の後は尚更だ。皆、腫れ物を触るみたいにオレを遠巻きにする。」

「瑠威…」

「ずっと思っていた。生まれて来なければ良かったのに──って。」

 瑠威の言葉は、ボクの胸を深く抉|《えぐ》った。堪えていた痛みを吐き出すかの様に、尚も彼は続ける。