成程、そういう事か…。

道理で、瑠威の剣には一片の迷いも見られなかった訳だ。

「《風の星》は代々、天賦の才に恵まれる血筋だ。その中でも、瑠威は特筆すべき才能を持っている。本来の『力』が戻ったら、一体、何|《ど》れ程の者になるのか…想像も付かないよ。何しろ、あの宗吉翁|《そうきちおう》が、『力』を分散させる程だからね。」

 細い指を顎|《おとがい》に当てて、祐介は言う。

「その天才当主が、今また、至高の銘刀 《霧風》を手に入れたんだ…最強だね。僕らも、ウカウカしてはいられないな。」

 剣術の師範である祐介にとっても、瑠威の持つ可能性|《ポテンシャル》は脅威の様だった。東吾も又、真摯な眼差しを向けている。

 伝説の剣と、天才剣士の出逢い──。

そうして。この時のエピソードが、後に、《風の星》当主・神崎瑠威の、鮮烈なデビュー秘話として語られる事になるのだった。