ボクは、腹を括った。

宝剣を手に取ると、鞘(サヤ)に納めたまま刀帯(カタナオビ)にして、その場に立つ。

「抜かないの?良い度胸だね。」

 無言で見据えるボクを見て、瑠威は馬鹿にした様に笑う。

「オレに斬られる覚悟が出来たってわけ?随分、諦めが良いんだね。」

「───。」

「そう…解った。アンタの方こそ、今、楽にしてやるよ。首座の重責から解放されたら、ママの所に泣いて帰るといい。」

 瑠威は、大上段に剣を構えた。

「覚悟は良いか、金剛首座!?」

──ブン!

風鳴りと共に、剣が振り下ろされる。

 ボクは瞬時に抜刀した。
繰り出された鋒(キッサキ)を右に弾き、返す刀で瑠威の剣を叩き落とす。

ガキィィ───ン!

火花を散らして閃く白刃(ハクジン)。
瑠威の動きがピタリと止まる。

「居合い…!?」

 唖然とする風の当主を尻目に、ボクは刀を鞘に納めた。

──その刹那。ギィン!と鋭い金属音と共に、宝剣・緑風は鍔元で折れて、弾け飛ぶ。

「嘘だ、緑風が──!?」

 折れた刃が、道場の床に突き刺さる。
瑠威はガクリと膝を着いて、その場に崩れた。

「瑠威!!」

 瑠佳が兄の元に駆け寄る。
同時に、東吾の声が、高らかに道場の空気を震わせた。

「勝負あり!勝者、金の星。」

 …全てが、決着した。
同時に。ボクの体内から全ての力が、抜けていった。