あんまりだ。こんな滑稽な話があるか??
ボクも親父も、お互いの為を思うが剰り、擦れ違っていたのだ。

自分の出来る精一杯の事をしたいと──ただ、そう願っただけなのに。

「結局二人とも…ただ空回りしていただけなのか?」

 ボクの呟きに、答える者は無かった。
重苦しい沈黙だけが積もってゆく。

…どうして。どうして、こうなるんだ?
何だかもう、訳が分からない
自分が、本当はどうしたいのか…どうしたかったのか──どんどん解らなくなって行く。

 甲本家の当主に成るのは、とても大変そうだ。

こんなたいそうな家柄だったなんて…ボクは、ちっとも知らなかった。だからこそ、跡を継ごうと単純に考えてもいた。

 でも──今なら解る。

ボクは、馬鹿だった。
全ては子供の浅知恵だったのだ。

『コイツになら自分の跡を任せられる』…
ボクは、親父に、そう言って欲しかっただけなのだ。