「…どうして。」

 突如ワナワナと震え出すと、風の当主は激昂する。

「どうして、そんな勝手な真似をするんだよ??そんな事…オレは望んでいなかった!」

 大粒の涙がハラハラと白い頬を伝う。
彼を救う為に振るった秘剣──だけど。
瑠威…こんなに泣くなんて…

 ボクの胸は、切なさに締め付けられた。

傷付いた心を隠そうと、必死に虚勢を張る彼は、とても小さくて…まるで、迷子になった幼子の様だった。

嘆く姿が哀しくて、痛々しくて…これ以上見ていられない。

「瑠威…もう自分を傷付けて生きるのはよそう?君は、充分に苦しんだじゃないか。もう楽になって良いんだよ??」

 ボクは、思わず手を差し延べた。
握手でもするつもりだったのか──自分でも、良く解らない。

只、む彼があまりにも小さく、儚げで──誰かが支えなければ、今にも消えてしまいそうに思えたのだ。

「何故そんなに憎しみに促(トラ)われる?辺り構わず怒りをぶつけたところで、状況は何も変わらない。瑠威が傷付くだけだ。もう…自分でも解っているんだろう?君が本当に望んでいるのは、優しさや人肌の温もりだ。争う事じゃない。」

「………。」

「認めるんだ、瑠威。それだけで楽になる。君の魂魄を縛っていたものは消えた。もう、先に進むしかないんだよ。」