戸惑うボクに、尚も祐介は畳み掛ける。

「あのね。キミは知らなかったんだろうけれど…首座は、女性でも成れるんだ。」

「え?」

「過去にも何度か、女性が首座に就いた例がある。別段、珍しい事じゃない。だからキミも、無理に男になる必要はなかったんだ。」

「じゃあ…親父は、男の子が欲しかったわけじゃないの?」

 振り向けば、おっちゃんは、気まずそうに頭を掻いて頷いた。

「ゴメンな、薙。俺が、もっとちゃんと説明してやれば良かったな…」

 そう言って、項垂れる様に肩を落とす。
巨漢のおっちゃんが、この時ばかりは小さく見えた。

返す言葉も…罵りさえ思い付かなくて、ボクはいっそ泣きたくなる。

 そこへ。祐介が静かに話を繋いだ。

「伸之さんはね。『薙』という跡継ぎの存在を、随分長い間、一族に隠していた。六星の中には未だに、伸之さんに子供がいた事を知らない者もいる。家業や一座の事情を、何一つ伝えないまま逝ったのは…恐らく、継承に関わる事で、キミに余計な苦労を負わせたくなかったからだろうと思うよ。」

「つまり──擦れ違っていたのね、アンタと伸ちゃんの想いは。」

「そんな……!」

追い討ちを掛ける様な苺の一言は、ボクの胸を深く抉った。