『話って?』…と、彼は訊いた。

大きな瞳が、真っ直ぐにボクを見据える。勝ち気な性格そのままの、鮮烈な光を宿す印象的な目だ。

 …そうして改めて向き合ってみると、瑠威は一段と華奢に見えた。

細過ぎる手足。透き通る白い肌。
煙(ケブ)る様な、淡い灰色の髪…。

まるで、霞を集めて造られた人形の様だ。
微かな胸の膨らみを隠す様に、わざと大きめのシャツを着ている。

『ギリシャ神話』のアンドロギュヌス(両性具有者)が、この世に実在するなら、きっとこんな姿なのだろう。

 キュッと結ばれた形の良い唇は、彼の性別をますます曖昧なものにしていた。

美しい少年…だが。
この儚くも妖しい美しさが、彼の身に災いを持たらしたのだ。

 瑠威の刺す様な視線を真っ向から受けながら、ボクは言った。

「瑠威に折り入って頼みがあるんだ。中に入れてくれる?」

「…いいよ。但し、入って良いのは薙だけだ。その他大勢は部屋の外で待ってな。」

 苛烈にそう言い放つと、少年当主は、妹と四天等を下がらせた。

『その他大勢』の中に自分も含まれている事を知って、瑠佳は一瞬傷付いた様に顔を曇らせる…が、やがて。

己の四天達に付き添われる様にして、静かに後ろに下がった。