宵の明星が、夕映えの空を、ダイヤモンドの様に飾っている。美しい夜空を車窓の向こうに眺めながら、僕は想いを巡らせていた。

 瑠威の過去に触れる事は、正直かなり辛かったけれど…何も知らないまま、彼と接するよりは絶対に良い。

それに、瑠佳が抱える悩みも知る事が出来た。

 双子とは云え、彼等は別の人間なのだ。
ボクらは、そこを履き違えちゃいけない…。

瑠威が受けた屈辱も、瑠佳が抱える悩みも、ボクは全て受け止めるつもりだった。

「──つもり?」

 不意に話し掛けられて、
ボクはハッと我に返る。

「あ…ゴメン祐介。今、何て?」

 運転席の祐介は、片手でハンドルを操りながら、呆れた様なからかう様な顔で、ミラー越しにクスッと笑い掛ける。

「瑠威と何を話すつもり?って訊いたんだよ。随分、熱心に考え事をしていたね。」

「あぁ、うん。ごめん。兄妹ってどんな感じなのかと、想像していたんだ。」

 そう答えると、祐介は曖昧な顔で笑った。

「そう云えば、キミは一人っ子だったね。」
「うん、祐介は?」
「僕は…上に、優秀な兄が一人。」
「お兄さんがいるの??」

「あぁ。知らなかった?」
「うん。そうか、お兄さんが…。」

 繰り返し頷いて、ふとルームミラーを見遣ると、祐介は、秀麗な双眸を僅かに歪めていた。

どうしたのだろう?

『お兄さん』の話が出た途端、祐介の表情に暗い影が差した。

訊いてはいけなかったのだろうか?