暫しの沈黙の後。
東吾は、僅かに俯いて言った。

「それから暫くの間、瑠威は、重度の人間不信に陥りました。誰に対しても心を閉ざし、一日中、部屋に引き篭って…。弱い体で高度な秘術を発動させた為、魂魄のダメージも大きかった…。」

 そこで、先々代の当主である神崎宗吉翁が、瑠威の潜在能力を、半分だけ妹の瑠佳に『移植』したのだ。

「そんな事も出来るんだね…」
「あぁ──理論的には可能だ。」

 ボクの言葉に、祐介が頷く。

「いわゆる臓器移植と同じだよ。ごく近い血縁同志なら、《潜在能力》を共有する事は可能だ。但し、拒絶反応が出る事もある。瑠威と瑠佳は一卵性双生児だったから上手くいったんだろう。」

「そうか…あの二人には、そういう経緯があったんだ…」

 ボクは、堪らない気持ちになった。

鼻の奥がツンとする。
瞬きをした途端、涙が一粒溢れ落ちた。

「薙。」

 一慶に声を掛けられて、慌てて頬を拭う。

「お前、どうするつもりだ?知らなかったとは言え、事態は思ったより深刻だ。どうやって瑠威の心を開く?何かプランはあるのか??」

 …プラン、か。
勿論、そんなものは無い──だけど。
ひとつだけ可能性を感じる事がある。