「成程ね。」

一慶の失礼な態度に、少なからず腹を立てていると、不意に祐介が静かな声で呟いた。

「つまり薙は、自分が女の子だから、跡を継がせて貰えないんだ…と、そう考えていたんだね?」

ボクが頷くと、祐介は呆れた様に嘆息して肩を竦めた。

「…やれやれ。とんだ勘違いだよ。恐らく伸之さんは、一人の女性として、世俗の男性と平凡な結婚をして欲しいと考えていたんだ。娘の幸せを願ってね。」

「え……っ!?」

「首座は重労働だ。時には、命と引き換えにしなければならない任務も課せられる。そういう一族と縁を切るには、外に嫁ぐしかないんだよ。伸之さんなりに、キミを守ろうとしたんだろうね。」

「そう、それだよ!祐介の言う通りだ。」

おっちゃんが、やおら膝を打って言った。

「兄貴には兄貴の考えがあったんだ。でも、肝心な『言葉』が足らねぇ。あの人の唯一の欠点だよ…昔からのな。」

そう言うと。おっちゃんは、苦々しい顔でグイッと盃を煽る。