「瑠威は、誰に対しても壁を作っている。あんなに頑なに人を拒むのは、何か他に『特別』な理由があるからじゃないの?」

 真摯な眼差しを向けた途端──東吾は、不意に渋面を解いた。

「有難うございます、首座さま。貴女はそこまで、瑠威を見ていて下さったのですね。」

「教えて。東吾は何を知っているの?」

「申し訳ございません。『詳しくご説明する』と申し出ておきながら…貴女方があまりに楽しそうなので、つい言い出しそびれてしまった。」

迷いを吹っ切る様に、彼は続けた。

「話せば長くなりますが…聞いて頂けますか?」

「長いのは構わない。だけど…」
「だけど?」

「だけど、その前に確認させて?本当にボク等が聞いちゃって良いの??本人から聞こうと思っていたけれど…瑠威は、知られる事を嫌がっている様だった。」

 思うに──これは、とてもデリケートな問題だ。瑠威の人権に触れる様な、深刻な内容に違いない。

だからつい、躊躇してしまう。
──どこまで立ち入って良いのか?
正直、自分でも判断がつかない。

 東吾は、優しく破顔して言った。

「構いません…いや、寧ろ、貴女にだけは知っておいて頂きたい。それは最初に申し上げた通りです。…ああ見えて瑠威は、構って欲しい気持ちは人一倍なんですよ。首座さまが御味方に就いて下されば、我等四天も、随分気が楽になります。」