ボクは、同じ苦悩を抱えているであろう風の北天に、声を掛けた。

「瑠威は、いつから自覚症状があるのかな。東吾は、何か聞いている???」

「いえ…瑠威の持病についても、症状の進行具合も、先程初めて知りました。」

 深く消沈する東吾。

北天という立場に在りながら、当主の変化に何も気づかなかった自分を責めている。

そんな彼に、ボクは瑠威から受けた印象を語った。

「瑠威と話して感じたんだ。あの子は何かを憎んでいる。同時に、酷く怯えてもいるんじゃないかって。」

 硬張ったあの表情を思い出せば、胸が痛む。

震える肩。青褪めた顔。

混迷する心理は深い闇の底にあり、どんなに手を延べても、彼の元には届かない。

「病気の原因や詳しい症状は、良く解った。確かに大変そうな病気だけれど…治療を受ければ、完治は無理でも、症状の改善は可能だって事も解った。なのに瑠威は、その一切を拒んでいる。医者に掛かるのを避けているみたいだ。…あの子が抱えているものは、病気だけじゃないって気がする。」

「首座さま。」

 戸惑いの表情を見せる東吾に、ボクは思い切って切り出した。