ボクは、瑠威と距離を取りながら、慎重に話し掛けた。

「瑠威、落ち着いて。ボクは話をしに来たんだ。いくら喧嘩を売られても、買うつもりはないよ。」

「嘘だ！どうせアンタも、同じなんだ。俺を利用するだけ利用して…手なずけた後で、好き勝手するつもりなんだろう!?」

「そんな…手なずけるなんて…」

　瑠威の瞳は、激しい憎悪に燃えている。
…何だ？何がこんなに彼を怯えさせている？

「首座さま。」

　不意に、声を掛けられた。
振り向けば、背後に長身短髪の青年が立っている。彼は、複雑な眼差しでボクを見詰めていた。

「貴方は？」

「私は、《風の星》北天の任を預かります、土師東吾(ﾊｾﾄｳｺﾞ)と申します。」

「風の…北天…？」

　初めて顔を会わせた《風の星》のリーダーは、物静かな人物だった。

短い黒髪と、生真面目そうな佇まい。
黒曜石を想わせる瞳が印象的な…知性を感じる顔立ちをしている。

　まるで、よく鍛えられた『刀』の様だ。
凛と澄んだ強さを感じる。