瑠佳は、ボクの肩に自分の頭を預ける様にして、見上げて来た。

顔と顔が、ごく近い場所にある。
首筋に温かい吐息がフワリと掛かって、同性なのに…少しドキドキする。

 思わず視線を泳がせると、瑠佳は、不意に大人びた微笑を浮かべて訊いた。

「ねぇ。薙は、変に思わなかった?あたしと瑠威が、部屋の中でも風を起こしたりする事…」

「変?…いや、凄いとは思ったよ。」

「でも、普通さ。念じるだけで風を起こすなんて、出来ないよね?なのに、あたし達には出来てしまう。どうしてなのか解る?」

「それは…」

解らない。
改めて考えてみると、確かに謎だ。

風を操る超常の力──か。
まるで、アニメやコミックの様じゃないか。
人間離れしているとしか言いようが無い。

 ボクの困惑を見抜いてか、瑠佳はクスッと笑って言った。

「要するに…《風の星》の当主は、自然を動かす力を持っているの。勿論、修行をして、行力を磨いたりもするんだけれど…なんて云うのかな?『天性の才能』ってヤツ?? 特に行を積まなくても遣える術が、沢山あるんだ。」

「あぁ…それなら解る。」

 つまり、ボクと同じなのだ。
いつの間にか、力を遣いこなしている。

 瑠佳は、ボクに身を預けたまま無邪気な笑顔で言った。

「いろいろ出来るんだよ、あたし達。風を起こしたりするだけじゃなくてね。動物や植物と会話したり…胎児や死者と交信する事も出来る。たくさん《徳》を積めば、雨を降らせる事も出来るって…パパが言うの。」

「す…凄い、ね。」

 ボクは呆気にとられてしまった。
成程。これが瑠佳の云う『超自然』の力なのか…。