自我を否定する、頑なな心。
自身の能力の対する強いコンプレックス。

自分が『女』である事を、否定的にしか捉えられなかったボクと…『半分の力』しか持たない自分を、肯定出来ない瑠威。

──やはり似ている。
だから、ボクは彼を放って措けないのだ。

 と、その時。
瑠佳が、突然しなだれ掛かる様に、ボクの胸に倒れ込んできた。

「瑠佳!?」
「……」

グッタリと凭(モタ)れ掛る瑠佳の顔は、紙の様に白い。

 思わず抱き起こした時。

視界の端に、此方へ駆け寄ろうとする一慶と遥の姿が、見えた。ボクは、手を挙げてそれを制する。

 …瑠佳は、ボクに何かを伝えようとしていた。落ち着くのを待って、静かに話し掛けてみる。

「大丈夫、瑠佳?顔色が悪い…」

「術を使うと、時々こうなるの。少しだけ…こうしていても良い?」

 瑠佳は、ボクの肩にコツンとこめかみを当てて訊ねた。勿論、ボクに断る理由など無い。

「薙…あたし、本当は…当主になんか成りたくなかった。」

「瑠佳。」
「でも我慢しなきゃ…瑠威の為に。」

 どこか虚ろな調子で呟く瑠佳。
ボクは、少し不安になって訊ねた。

「あの…瑠佳?ちゃんと解る様に話してくれるかな。君は何を我慢しているの??術を使うと疲労するのは何故?」

 すると瑠佳は、小さく溜め息を吐いて語り始めた。

「…あたし、瑠威の行力を半分だけ『預かって』いるの。」

「預かって…半分だけ!?」

「うん。瑠威は生まれつき身体が弱くて…当主になるには不安があると言われていたの。だから、あたしのサポートが必要だって…。髪も目も肌も、あたしより白っぽいでしょ?だから、白児《はく》じゃないかって言われていて…瑠威は、それをとても気にしているの。」

「そう…。瑠威には、そんなハンデがあったのか…。それで君達は、二人一組の当主になったんだね?」

「そうなの。パパが云うにはね。《風の星》の行者は、六星の中でも特殊なんだって。特に当主の直系は、生命の根源に関わる、超自然的な力を授かって生まれてくるって…。ねぇ…この意味、解る?」

「あ──えーと…」

 思わず言い淀んでしまった。
表現が抽象的過ぎて、意味が良く解らない…。