「そんな事があったのか?」

一慶が疑わしげに一蔑を投げると、おっちゃんは難しい顔で腕を拱(コマネ)いた。

「うぅむ…まぁ確かに。そんな風な事を言ったには言ったんだが…なんつうか、こう──ニュアンスが微妙に違うんだよなぁ。」

「どう違うの?」

 厳しい口調で問い詰めると、おっちゃんはポリポリと頭を掻きながら言った。

「──兄貴はな。薙が女の子だから、重荷を背負わせたく無かったみたいなんだ。正嫡なんかになっちまったら、苦労するのが目に見えているらなぁ。その前に何処ぞへ嫁がすなりして、一族の揉め事から解放してやりたかったんだよ。」

「え──っ!?」
「何───??」
「嫁───!?」