何れ位、其処でそうしていただろう?
巻かれていた腕が不意に緩み、遥が照れ隠しの様に笑った。

「はい、充電完了!」
「充電!?」

「うん。鍵島遥ともあろう者が、柄にも無く凹んじゃったからね。薙のパワーを分けて貰ったんだ。お蔭で元気になれたよ。ゴメンね、びっくりしただろう?」

「遥…」

「本当は、薙にお礼が言いたかったんだ。あの時…巳美を俺に預けてくれて有難うって。でも、言葉より先に手が出ちゃった。」

 そう云うと。遥は、いつもの調子で『あはは』と笑った。

「遥…。ボクは遥に、酷い事を押し付けたね。親の仇の世話をさせてしまった。」

「いや。あれが無かったら、俺は未だ奴を恨んだままだった。グッタリしている巳美を見たら、『あぁ、コイツも一応人間なんだなぁ』って思えたよ。お蔭で、長年つっかえていた色々なものが吹っ切れた。有難う、薙。」

 遥は、ボクの意図を、ちゃんと理解してくれていた。晴れやかな笑顔を見ていると、言葉以上に彼の気持ちが伝わって来る。

…良かった。
遥の心が楽になったのなら…
ボクはもう、それだけで満足だ。

「瑠威にも、早く楽になって貰おう。あの子は、少し特殊な事情を抱えていて…だから、人一倍傷付き易いんだ。でも薙なら瑠威を、その檻から出してあげられる。俺は、そう信じているよ。」

「…うん。頑張る。」

 ポンポンと頭を撫でられて、ボクの中から不安が消えた。

瑠威…。瑠威を探さなければ。
彼が六星行者なら、きっと解って貰える筈だ。