行者の父母を持つ子供達の悲劇。

ともすれば、『死』と隣り合わせの危険を伴う仕事。その哀しくも厳しい現実が…そこにはあった。

「右京さん。」
「はい。」

「もしかしたらボクは…あなた方親子に、とても酷い事をしているのかも知れない。でも…救いを求めて縋り付いてくる手を、振り解く事など出来ません。」

「解っています。先程、庸一郎が申し上げたでしょう?我々は、貴女に絶対帰依(ゼッタイキエ)したのです。貴女の『選ぶ道』には、無条件に従うと誓いますよ。」

「右京さん…」

「貴女が巳美を救って下さった事で、私は、長年抱いて来た、奴への恨みの呪縛から解放されました…。遥と私は、同じ檻に囚われた虜囚だ。…貴女が在(イ)なければ、一生涯、誰かを恨みながら過ごしていたでしょう。やはり…貴女は救世主なのだ。こうして我々を、業(ゴウ)の鎖から解放して下さる。」

 右京は、静かに進み出てボクの手を取った。

「息子達を…瑠威と瑠佳を宜しくお願い致します。どうか、業の鎖から解放してやって下さい。私は父親として…彼等にそれを施す事が出来ませんでした。」

『お願いします』と、何度も懇願する右京の手を、ボクは、力強く握り返して言った。

「解りました。お引き受けします。その代わり、方法はボクに一任して頂けますか?」

「勿論です。貴女の遣り方で、アイツらを使いこなして下さい。何やら…育児放棄の様で心苦しいのですが…」

 そう言って自嘲気味に笑う、右京。

儚いその笑顔に頷いて見せると、ボクは座を立ち振り返った。

「おっちゃん、後を頼むね。」

「おぅ。適当に盛り上がってるから、こっちは心配すんな。」

 頼もしい笑みを湛えて、おっちゃんが笑う。その眼差しに送られて、ボクは瑠威の後を追った。