「何だよ、それ…」

瑠威は、わなわなと拳を握って吐き捨てた。

「全部自分の責任にして…鈴掛のした事は、チャラにするつもり?そんなに簡単に、奴らを赦して良いわけ!?」

「瑠威、それは」

「それが綺麗事だって言うんだよ!アンタら大人が、そうやって、なし崩し的に奴らを赦すから、いつまで経っても鈴掛一門みたいなしたほう外法衆が、いなくならないんだ!!」

 瑠威は、睨め付ける様な眼差しを遥に…そして、広間の全員に向けた。

なんて強い、瞳の色だろう。
まるで吹き荒れる嵐そのものだ。

彼のこの激しい憤りは、一体どこから来るのか?

単に、大人に対する反発だけじゃない。
何か…この怒りを裏打ちする『事実』がある様に見える。

 一方…。事情を知っているらしい遥は、そんな瑠威の激情を寛容に受け止めながら、言い聞かせていた。

「…瑠威、俺の親父はね。別に巳美を恨んじゃいない。恨んで憎んでいたのは、俺の方だよ。自分の未熟さを認めるのが怖くて…だから、巳美を憎む事で、自分の気持ちを誤魔化した。つまり逃げたんだよ。俺は自分のミスを直視出来なかった。」

 遥は、自嘲する様に笑った。

「あれは…ちゃんと経験を積めば、避けられた筈の事故だった。その事は、親父が一番解っているよ。俺は、そんな親父にずっと負い目を感じていたんだ。」

「遥…。」

 思わず洩れた声に、彼は小さく微笑を返してくれた。不自由な体の父親を目にする度に、遥は、どれ程辛い思いをしただろう。

だから総本家の屋敷に入り浸たり、滅多に自宅に戻らなかったのだ。

 一人で抱え込んだ痛み…。

だけどそんな素振りも見せずに、誰にでも明るく微笑んで…。