皆が同じ結論を出そうとした…その時だった。

「ふざけんな!」

不意に、瑠威が激しい怒りをぶつけてきた。

「オレは認めないよ!薙が何を考えていようと、そんな事はどうだっていいんだ!俺は、鈴掛の奴らを許さない。当然、仲間だと認める気もないね!!」

 瑠威…。敢えて対等な口をきく事で、意志の固さを主張しているつもりなのか?まるで、仔犬が虚勢を張る様に、自身を『オレ』と呼んで見せる。

 可愛らしい反発が、彼の必死さを表している様だ。

「遥!アンタもハッキリ云ったら!?」

 瑠威の矛先は、遥に向いた。

「自分の父親が、あんな体にされて…それでもアンタ、巳美を赦せる!?」

 あんな…『体』?
訳が解らず巡らせた視線が、遥のそれとかち合った。刹那、彼は儚く苦笑して見せる。

辛そうな困った様な…そんな表情だ。
皆が、複雑な顔で遥を見ている。

「…あのさ、瑠威。お前、なんか勘違いしていない?」

 遥は──気持ちを落ち着ける様に、小さく溜め息を吐いて言った。

「親父が『あんな体』になったのは、全部俺の所為なんだ。」

「…は?」

 瑠威は、『理解出来ない』という様に、眉根を寄り合わせた。

「何言っちゃってんの?実際、巳美の術を喰らって半身不随になったんだろう、アンタの親父はさ!」

 遥のお父さんが、半身不随に?

驚いて見遣ると、遥は、僅かに顔を引き攣らせて唇を噛んだ──が。すぐに真剣な表情になって、瑠威を真っ直ぐに見詰め返す。

「…あの術はね。本来、俺が受けるべきものだったんだ。だけど、それを庇った親父が身代わりになってしまった。呪詛返しをした筈の術が、再び自分に戻って来るなんて…俺は予測もしていなかったんだ。未熟さが招いた事故だったんだよ。」

 そう言うと…遥は、きつく拳を握った。

苦い悔恨の念──。
過去の痛みを反芻するかの様に、彼は尚も話を続ける。

「俺が浅はかだった。あんな術、簡単に返せると思っていた。あれはね、俺の経験不足が招いた厄災だったんだよ。」