遥はボクの頬をソッと撫でて頷くと、巳美に近付き、萎えた身体を担ぎ上げた。

そこへ、祐介が然り気無く肩を貸す。
そうして二人は、倒れた巳美を《西の対》へと運んで行った。

 広間に足を踏み入れると、既に、裏一座の面々が集まってボクを待っていた。

宴も酣(タケナワ)で、嘸(サゾ)や盛り上がっている事だろうと思っていたが…流石にベテランの行者衆だ。今、邸内で何が起こっているのか、ちゃんと理解している。

 上座に近い席にいたおっちゃんが、ボクを見るなり、頼もしげに言った。

「よぅ、姪っこ!今度もまた、派手にやらかしてくれたなぁ!? 万事上手くいったか?」

「うん、上手くいった。思わぬ『拾い物』をしたよ。」

「…その様だな。お前の動きは、気配で解った。大した収穫じゃねぇか。」

『収穫』──か。

そう思っているのは、おっちゃんだけかも知れない。その証拠に、皆、険しい表情でボクを見詰めている。

 新旧一座の面子が着席したところで。
ボクは、思い切って一声を挙げた。

「状況は、既にお解り頂いている様ですので、単刀直入に申し上げます。鈴掛の大蛇を一匹、捕えました。」

 広すぎる座敷が、シンと静まり返った。
最初にその沈黙を破ったのは、姫宮庸一郎である。