烈火が、面食らった様に言う。

「ちょっ…何言ってんだよ、薙!?鈴掛一門は、ずっと前から敵と決まってんだ。俺らは、相容れない関係なんだよ!! 情けを掛けてやる必要なんか…!」

「ずっと前って、いつ?何年前の何月何日から?? 誰が『相容れない』なんて言ったの?」

「薙…小学生じゃねぇんだから…」

 火邑の当主は、すっかり呆れ果てていた。いや、呆れているのは彼だけじゃない。此処に居る全員が、少なからず、同じ思いを抱いていた。

 ──特に。
遥と瑠威には、強い反発の念を感じる。

 ボクは立ち上がって、皆を見回した。

「話しておきたい事があるんだ。皆、急いで母屋の広間へ集まってくれ。全ては、その場で説明する。瑠威、君もだよ。」

 一人、背を向け立ち去ろうとする瑠威に、ボクは強い口調で釘を刺した。瑠威は肩越しに振り返ると、反抗的に睨(ネ)め付けて来る。

「話なんて聞きたくない!」

「駄目だ。君も来なさい。当主になったんだろう?我が儘は許さない。」

「……っ!」

 悔しそうな視線だけが返ってくる。
ボクは、更に語気を強めて言った。

「神崎瑠威、聞こえなかったか?首座が命じているんだ。この意味は解るだろう??」