「うん…。恐らく、真ん中の『目』が巳美の魂だろう。今から、これを頂く。」

 意識を失った鈴掛の蛇霊遣いに──ボクは、静かに語り掛けた。

「巳美、お前の願いを叶えてあげるよ。」

冷えた頬にソッと触れると、巳美は微かに身動ぎする。

「お前には、こうなる覚悟が出来ていた筈だ。ボクの傀儡になれ。悪しき業(ワザ)から解放してあげよう。」

 …そうしてボクは、意識を集中した。

結んだ刀印を蛇霊に向けて二度三度と振ると、程無く『中央の目』がポロリと落ちる。

 黒く濁った巳美春臣の《魂魄》は、一部が剥落し、蛇の目の中に溶け込んでいた。

コロコロと膝の上に転がり落ちたそれを…ボクは、飴玉でも放り込む様に、口に投げ入れ飲み下す。

「…んっ!」

 熱い。怨みの炎に燃えた『くちなわ』の毒が、じわじわと体内に浸透する。

堪え難い嫌悪と想像を絶する痛みに、ボクは崩れる様にその場に倒れた。

「薙!」

 誰かがボクを呼ぶ声がする…だけど。
今は、それに応える余裕も無い。

 四肢が麻痺し、内臓を焼かれ、心を真っ黒に染め上げられる幻に…ボクは、苦しみ悶えた。