体が熱い──。

頭の芯が痺れて…ともすれば自我を手放しそうになる。坑し難い《金目》の力に、ボクの心身が支配されてゆく…。

 《金剛》の法名を継承してから、ボクは、以前にも増して不可思議な力を得た様だ。

歴代の金剛達の囁きが聞こえる。
自然に言葉が溢れ出る。

「鈴掛行者の蛇霊遣い、巳美春臣。汝は、我等の聖域を荒らし、尚且つ我が同胞(ハラカラ)を誑(タブラ)かした。この罪は、決して軽いものではない。故に、汝をこのまま《禊》の元に帰す訳にはゆかぬ。」

「どう、する気だ?」
「その身を預かる。」
「…何…だって?」

 巳美は、瞠目した。
唇がワナワナと震えている。
自分の身に何が起きているのか…必死に理解しようとするかの様に。

ボクは、巳美に捕まれた腕を、そっと解きながら言った。

「汝は、吾に仏の慈悲を願うた。吾は、神子だ。求められれば、それが誰であろうと救いを与える。」

「な、何言ってんだよ?」

「金の神子が、汝を受け入れよう。懺悔《ざんげ》を以《もっ》て、救いを乞うが良い。」

「やめろ…嫌だっ!!」

 巳美は、体を捩って抵抗した。
裏切りへの恐れと、救いを渇望する心。
二つの想いに苛まれながら…縋がる様にボクを見上げる。

「何を恐れる、巳美?これは、汝が自ら望んだ事ではないか。救われる事を恥じるな。…さぁ、蛇霊を明け渡せ!」

 一際強く祈りを籠めると、巳美は弾かれた様に地面を転げ回った。

「ふっ…ぅぐっ…ぁ…!」

 掌の中で彼の魂魄が、ドクンと跳ねる。