短い沈黙を愉しむ様に、蛇霊遣いの男は、ゆったりと紫煙を燻らせながら話した。

「処分の程は、お任せしますよ。首座さまのお好きに、どうぞ。俺は元々、そのつもりだったからね。拷問に掛けるも良し、幽閉するも良し…それとも、一息に殺してしまう?」

「それが、鈴掛のやり方か?」

「まぁ、そうだね。ウチの頭領に、情なんてものは通用しない。あるのは『利益と報酬』だけだ。役に立たなきゃ、腹心だろうと切り捨てる。サッパリしたもんだ。」

 投げ遣りな態度で、巳美は続けた。

「俺達は生きた『駒』だ。いつ切られても文句は言えない。その点、『慈悲深い』六星の首座さまは、どう対処なさるのかなと思ってね。」

 皮肉な、せせら笑い。
まるで…自らを罰する事を促す様な態度だ。

 ──その時。ボクの金目には、彼の『心』の一部が透けて見えていた。彼が本能的に願っている事…それは多分、本人ですら気付いていない。

 挑む様な眼差しを向ける巳美に、ボクは応えた。

「そうだな…」

ポツリと小さく呟くと、彼の視線を真っ向から受け止める。

「そこまで言うのなら、見せてやろう。六星の首座は──こうするんだ!」

 ボクは片手で巳美の顎を捕え、強引に上向かせた。

首から肩へと続く、逞しい筋…。
露わになった喉笛。
無防備なその胸に、ボクは右手を押し当てる。そして、そのまま一気に『中』へと指を挿し入れた。

「ぅ──くっ!?」

 巳美の顔に、初めて恐怖と驚愕の色が浮かんだ。咥えた煙草が、ポトリと落ちる。 ボクの指は、巳美の厚い胸板を突き破り、彼の魂魄深く沈み込んで行った。

捕われた《蛇霊遣い》は、恐怖に顔を引き攣らせ、激しく目線を泳がせる。

「な…な、に…をする…?」

 苦痛に喘ぎながらも、巳美は、戦慄(ワナナ)く手で必死にボクの腕を押さえた。

爪が皮膚に食い込んで来る。
痛い。だけど離す訳にはいかない。