「…勝手な事を」

「あぁ、勝手だよ。俺ら鈴掛は、私利私欲でしか動かない。元々、身勝手な奴らの集団だ。」

 ボクの言葉を乱暴に遮ると、巳美は咥え煙草でクイと顎を聳()ソビやかした。

「俺の話は、これで全部だ。それで?首座さまは、どうなさいます??」

「どうって…」

「こう見えても、俺は一門の次席を張る男だ。しかも御覧の通り手負いと来ている。痛め付けるなら、弱っている今がチャンスですよ?」

 この横柄な態度…。
巳美は、自分の能力に絶対の自信を持っている。こちらの反撃を予測して猶、それを少しも怖れていない。

 単身、敵の本拠地に出向くという、一見、無謀に思える行動も…全ては、高度な行力の裏付けがあるからこそ、出来る暴挙なのだ。

 ボクは、現在の六星と鈴掛の間に、明らかな組織力の差を感じていた。行力だけ見れば、六星一座との差は殆んど無いに等しい。

 それどころか。組織全体の総合力は、鈴掛一門の方が優るかも知れない。

精鋭ばかりが名を連ねる、エリート行者の集団…。

解っていたけれど…こうしてそれを目の当たりにすると、底知れない恐怖を感じた。