思わず訊き咎めると、巳美はハッと我に返った。そんな彼に、ボクは同じ質問を繰り返す。
「あの人とは誰だ、言え!」
「我等一門の頭領──《禊》さま、さ。」
「みそぎ…?」
「鈴掛の頭領は、代々、《禊》の名を襲名する。アンタ等と同じだ。但し、その素性は一切明かされない。勿論、世襲制でもないし、アンタ等の様な盛大な継承式も行わない。ある日突然、頭領が入れ代わっている事もある。禊さまの顔を知るのは、俺達幹部の行者だけだ。」
「……。」
初めて知る鈴掛一門のシステムに、ボクは暫し呆気に取られた。
「その頭領が、ボクを欲しがっていると云うのか?…何故?」
「解らないか?アンタが首座だからだ。」
「どういう意味だ?」
「我等一門の目的は、天魔の力を開放し、この世界を粛清する事だ。腐り切った裟婆世界を、綺麗サッパリ『禊ぎ』するのさ。本当に必要なのは、第六天魔・信長だけだ。だが、奴を完全に掌握するには、神子で首座のアンタが邪魔なのだそうだ。」
「つまり…ボクを殺そうと?」
「そうだ。吾が頭領は、金剛首座の命を欲している。せいぜい気を付けるんだな、お嬢さん?」
巳美の言葉に、ボクは返す言葉も無く黙り込む。禊の『本当の目的』は、首座を弑(シイ)する事だった。
…では。親父も嘗ては、禊に命を狙われていたという事なのか──?
暴かれた真実は、あまりにも生々しくて、ボクは強か打ちのめされる。
恐い。
恐くて、言葉が…出て来ない。
巳美は、激しく咳き込みながら、二本目の煙草に火を点けて言った。
「綺麗な首座さん。正直、アンタを拉致るのなんて簡単な事だよ。この屋敷の結界も、俺一人の力で難無く破れたしな。」
そう言うと──蛇霊遣いの男は、溜め息と共に大きく煙を吐き出す。
「だが、六星の当主を弑する事は容易じゃない。霊的守護と四天の守護──この二つに阻まれて、禊さまですら、手を下す事が出来ないんだ。だから、俺が来た。禊さまが、そうも執着するの首座の御尊顔を拝みに来たって訳さ。」
「あの人とは誰だ、言え!」
「我等一門の頭領──《禊》さま、さ。」
「みそぎ…?」
「鈴掛の頭領は、代々、《禊》の名を襲名する。アンタ等と同じだ。但し、その素性は一切明かされない。勿論、世襲制でもないし、アンタ等の様な盛大な継承式も行わない。ある日突然、頭領が入れ代わっている事もある。禊さまの顔を知るのは、俺達幹部の行者だけだ。」
「……。」
初めて知る鈴掛一門のシステムに、ボクは暫し呆気に取られた。
「その頭領が、ボクを欲しがっていると云うのか?…何故?」
「解らないか?アンタが首座だからだ。」
「どういう意味だ?」
「我等一門の目的は、天魔の力を開放し、この世界を粛清する事だ。腐り切った裟婆世界を、綺麗サッパリ『禊ぎ』するのさ。本当に必要なのは、第六天魔・信長だけだ。だが、奴を完全に掌握するには、神子で首座のアンタが邪魔なのだそうだ。」
「つまり…ボクを殺そうと?」
「そうだ。吾が頭領は、金剛首座の命を欲している。せいぜい気を付けるんだな、お嬢さん?」
巳美の言葉に、ボクは返す言葉も無く黙り込む。禊の『本当の目的』は、首座を弑(シイ)する事だった。
…では。親父も嘗ては、禊に命を狙われていたという事なのか──?
暴かれた真実は、あまりにも生々しくて、ボクは強か打ちのめされる。
恐い。
恐くて、言葉が…出て来ない。
巳美は、激しく咳き込みながら、二本目の煙草に火を点けて言った。
「綺麗な首座さん。正直、アンタを拉致るのなんて簡単な事だよ。この屋敷の結界も、俺一人の力で難無く破れたしな。」
そう言うと──蛇霊遣いの男は、溜め息と共に大きく煙を吐き出す。
「だが、六星の当主を弑する事は容易じゃない。霊的守護と四天の守護──この二つに阻まれて、禊さまですら、手を下す事が出来ないんだ。だから、俺が来た。禊さまが、そうも執着するの首座の御尊顔を拝みに来たって訳さ。」
