訝かるボクを、からかう様に眺めながら、巳美は言葉を続ける。

「そうだよ、試したんだ。鈴掛一門が今のメンバーになってから、天魔を使役するのは初めてだからねぇ。奴等がどれだけ使い物になるか、知る必要があった。つまり、試験運転だ。」

「そんな事の為に…!?」

「そうさ。巧くいけば、《黄泉の門》を開放する事も出来る。一石二鳥を狙ったんだよ。まぁ…生憎、そっちは失敗したがね。」

 こいつ──!

ボクは、ギリリと唇を噛んだ。
お試し感覚で、他人の人生を滅茶苦茶にする権利など、こいつにも誰にも無い筈だ。それを──鈴掛一門は、さも当たり前の様にやってのける。

噂通りの卑劣な連中だ。
見過ごす訳にはいかない…。

「…巳美」

 ボクの後ろで、紫が俄かに気色ばむのを感じた。

いつ殴り掛かっても不思議ではない状況なのに…彼は、奇跡的にそれを堪えている。

 ボクも、必死に怒りを押さえた。
キレている場合じゃない。
この男には、未だ訊(キ)きたい事がある。

「魔鏡を井戸に捨てたのは、何故だ?」
「簡単だ。要らなくなったからさ。」
「何だって?」

「彼処に置いて措けば、その内に霊障が起きて、六星一座が後片付けに狩り出される…そこで首尾良く、魔鏡の『正体』を当てられたら上々。気付かなかったら、それまでだ。六星行者の力量を測るには、丁度良い出し物だよ。違うかい??」

 巳美は、フッと煙を吐いて嘲けった。

「今回は《水の星》の坊っちゃんが、魔鏡の正体に気付いたお陰で巧くいった。どうにか及第と言える範囲だが…まぁ勘弁してやるよ。良かったな、首座さま?」