六星行者【一之卷】~銀翼の天子

 闘いの中で培われた信頼感。

新生六星一座には、既にそういう関係が出来上がっている。それがとても頼もしかった。

 一方で、巳美も負けてはいなかった。

鋼の様に鍛えられた肉体は堅牢で、多少の攻撃では全く衰える様子が無い。

 …現に。
巳美は、掠り傷一つ負っていなかった。

仰向けに倒れた姿勢から大きく身を反らすや、バネの様に撥ねて立ち上がる。

「やるねぇ、流石は火邑のご当主!だが、セオリー通りとは些か失望したな。アンタなら、もっと奇抜な方法で弾き返してくると思っていたのになぁ。」

 不敵な笑みを履いてそう言うと、蛇霊遣いは、烈火に向かって鋭い蹴りを放った。

間一髪これを避けた火の当主だったが、体勢を整えるのに精一杯で、仕掛けようと構えた時には、既に巳美の姿は無い。

 鈴掛の蛇霊遣いは、ヒョイと体を反転させて、烈火の攻撃を躱わしていた。

恐ろしく身が軽い。
まるで軽業師だ。
行力も身体能力も、ずば抜けている。
巳美の鬼気が更に凄味を増し、烈火の顔付きも変わった。

「煽っているつもりか、蛇遣い?セオリー通りで何が悪い!要するに勝ちゃ良いんだろう??」