──漸く場が和んだ、その時であった。

パシャッ!
パシャ、パシャッ!!

突如、不躾なフラッシュが焚かれて、ボクは思わず片手を顔に翳した。何が起きたのか??目が眩んで、何も見えない。

「これは失礼。リラックスした表情も素敵ですねぇ、金剛首座さま?」

 中庭から、聞き慣れない声が上がる。
驚いて顔を巡らせると、楓が舞い散る二枚岩を背に、細身の若い男が立っていた。

「いい絵が撮れましたよ。何せ被写体が良いのでね。」

そう云う彼の手には、見るからに高そうな一眼レフのカメラが携えてある。

 …誰だろう?
この視線、何処かで会った気がする。

細面に長い手足。
年齢にして二十代半ば位だろうか?

黒皮のジャケットに、ウ"ィンテージのジーンズを履きこなす痩身は、一度見たら忘れられない空気を纏っている。

 ──妙だ。
マスコミ関係者の中に、彼の様な記者は居なかった。

突然の事に立ち尽くしていると、祐介と遥が然り気無く歩み出て、ボクを背に庇った。

 烈火も立ち上がり、瞬時に身構える。
殺気を孕んだ風が、木々の葉を揺らした。

「マスコミ関係者への公式取材は、とうに終わった筈ですが?どちらの無礼者かな??」

 祐介が慇懃に誰何(スイカ)すると、男は薄い唇にニッと酷薄な笑みを浮かべた。ボクを見詰める眼差しは、嘲(アザ)ける様に禍々しく歪んでいる。

「…さぁて、何と答えたものかなぁ。」

 不気味な薄笑いを口元に履いて、男はツカツカと歩み寄った。回廊まで、あと数歩という所で、突如、男の行く手を見えない壁が阻む。

 風──??風の防護壁だ。

振り返れば、遠く《西の対屋》の回廊に、美しい双子の姿が見えた。

《風の星》の瑠威と瑠佳…。

印を結んだ手を高く掲げ、強い視線で男を威嚇している。双子が造り出した《風の結界》は、激しく渦を巻きながら、男の足を止めていた。

二人の手は、絡めるように確りと繋がれている。

彼等特有のスタイルだ。