儀式が一通り済むと、これに続いて四天の面々が《法名》を相承した。

四天は、当主と違って世襲制ではない。
だから『継承』とは云わず、『相承』と云い表される。

 四天衆の相承儀式は、おっちゃんに代わって、鷹取雅彦が導師を務めた。古くから伝わる一座の法式(ホッシキ)に則って、《金の星》の四天一人一人に、法名を打ち込んでゆく。

「北天、甲本一慶(コウモトカズヨシ)。汝に『鋼(ハガネ)』の法名を授く。」

 威厳を帯びた鷹取の声に呼ばれて、一慶が前に進み出た。合掌して恭々(ウヤウヤ)しく頭を下げると、その頭頂に五鈷杵(ゴコショ)が当てられる。

同じく、西天・坂井祐介は、『銀(シロガネ)』を…東天・鍵島遥は、『鉄(クロガネ)』を──そして。

南天・小椋苺は『銅(アカガネ)』を、各々相承した。

先に印証を授かった《水の星》《風の星》は、外陣(ゲジン)に下がって、ボク等を見守っている。

 最後に、『当主継承の印証』と、首座のみに与えられる修法書──儀記(ギキ)を手渡されて、継承式は無事、成満(ジョウマン)した。

 その後。ボクは、一座の代表として、記者の前で簡単なインタビューを受けた。

正味十分程度の囲み取材だったが、矢継ぎ早な質問が浴びせられて、その都度彼等の記者魂を見せ付けられる思いがした。

 深淵なものから下世話なものまで…とりとめの無い質問責めが続き、時には答えに窮する場面もあったが、悪戦苦闘しながらも、素直な気持ちだけを語る。

…全てが終わったのは、正午も大分過ぎた頃であった。