全身に注がれる視線。

無言の威圧に負けない様に、一段高い内陣へ左足から昇る。

 教えられた通り、参座者達に頭を下げた刹那…ボクに向かって、一斉にフラッシュが焚かれた。激しい閃光に、一瞬視界が真っ白になる。

 こんなに…こんなに大勢のマスコミが、取材に来ている。生まれて初めての経験に、思わずゴクリと喉が鳴った。

 すると──

「お、こっち向いたぞ。」
「カメラ、カメラ。」

「ちゃんと回ってるか?正面は、確り押さえとけよ!」

 場違いな囁きが、そちこちで上がった。
儀礼に則って礼装した参座者に混じって、カメラを構えた数名の記者らしき姿が見える。

新聞雑誌の取材陣に混じって、テレビ局のカメラも数台設置されていた。

 興味本位に覗き見る眼、眼、眼…

皆が、物珍し気にボクを観ている。
まるで見世物にでもなった気分だ。

 少しの不快を覚えつつ、ボクは取材陣の一人一人を見詰め返した。

《六星一座》が、マスコミの取材を受け入れる事は、極めて稀である。当主着任継承式がこうして一般公開されるのは、ボクの親父の時以来だ。

一座が、この継承式の取材に応じたのは、宗教的行事というより、内外への御披露目という意味合いが濃い。

 どちらにとっても、有益な式典…。

何しろ、一山の首座の代替りともなれば、宗教界でも話題に上る程の聖儀である。

況してや、通常あまり知られる事の無い《六星一座》の、数少ない公開式典ともなれば、色めき立つのも道理だ。

真言宗の中でも秘密の多い宗派だけに、世間が注目するのは、仕方の無い事なのかも知れない。だけど──