…継承の儀では、一座の総元締めである《金の星》が、最初に入堂する段取りになっていた。待機して間も無くボクの名が呼ばれ、前室の白木戸がそろそろと開かれる。
遂に──この時が来た。
勇気を出して一歩踏み出せば、直ぐに参座席の様子が見える。
どうしよう。凄い人数だ。
皆、ボク等の入堂を、今か今かと待ち詫びている。
動揺のあまり、思わず視線をさ迷わせると、直ぐ目の前に向坂紫の姿を見付けた。
昨夜同様、黒地に獅子の柄が入った紋付き袴で正装し、参座席の最前列に座っている。その隣には、やはりキチンと正装した烈火が座して、眩しそうにボクを見上げていた。
紫がいる…。
そう思った途端、反射的に後ろを振り返ってしまう。すると空かさず、頭の中に苺の声が響いた。
『こら、ちゃんと前を向きなさい!!』
《他心通》で怒鳴られて、ボクは思わず姿勢を正す。
苺は、思っていた以上に冷静だった。
それどころか、いつにない厳しさで叱り飛ばして来る。
『ほら、呼ばれたわよ!シャキっとしなさい。参座者が何人居ようと関係ない。確《しっか》り胸を張って歩くのよ?? アンタ、貧乳なんだから!』
こんな時でも毒を吐く…。
彼女らしい励まし方は、普段と全く変わらなかった。
力強い太鼓の音に導かれる様に歩を進めると、堂内がシンと静まり返る。
遂に──この時が来た。
勇気を出して一歩踏み出せば、直ぐに参座席の様子が見える。
どうしよう。凄い人数だ。
皆、ボク等の入堂を、今か今かと待ち詫びている。
動揺のあまり、思わず視線をさ迷わせると、直ぐ目の前に向坂紫の姿を見付けた。
昨夜同様、黒地に獅子の柄が入った紋付き袴で正装し、参座席の最前列に座っている。その隣には、やはりキチンと正装した烈火が座して、眩しそうにボクを見上げていた。
紫がいる…。
そう思った途端、反射的に後ろを振り返ってしまう。すると空かさず、頭の中に苺の声が響いた。
『こら、ちゃんと前を向きなさい!!』
《他心通》で怒鳴られて、ボクは思わず姿勢を正す。
苺は、思っていた以上に冷静だった。
それどころか、いつにない厳しさで叱り飛ばして来る。
『ほら、呼ばれたわよ!シャキっとしなさい。参座者が何人居ようと関係ない。確《しっか》り胸を張って歩くのよ?? アンタ、貧乳なんだから!』
こんな時でも毒を吐く…。
彼女らしい励まし方は、普段と全く変わらなかった。
力強い太鼓の音に導かれる様に歩を進めると、堂内がシンと静まり返る。