「玲一は嵌められたんだよ…。」
テーブルに突っ伏していたおっちゃんが、ムクリと起き上がって言った。
「その痣は、くちなわ紋って言うんだ。」
「くちなわもん…?」
「あぁ。薙にも話したよな、《鈴掛一門》の概要は。これは、奴等特有のテクニックだ。敵は、プロ中のプロだからな。仕事は抜かりなくキッチリこなす。霊の気配まで、跡形も無く消し去ってしまうという念の入れようだ。俺達六星ですら、気付かない事もある。」
──凄い。そんな事が出来るのか?
それに…権威有る医師が、鈴掛一門の行者だったなんて!
「何だか…怖い。」
「そうだね。医師の仮面を被って、命を自在にコントロールするなんて…一番、怖い行者かも知れない。」
祐介は、考え込む様に長い指で顎を捉えた。
「千里さんのオペは、九鬼医師が自ら執刀を希望したものだったらしい。客員教授となって暫く現場を離れていた彼が、自分から執刀を申し出るなるなんて不自然極まりない。恐らく九鬼は、最初から千里さんを入院させる目的で、掛り付けの医師に大学病院でのオペを勧めたんだろう。」
確かに。千里さんを手元に置いておけば、いつでも《くちなわ紋》を打ち込む事が出来る。
職権濫用も甚だしいが、元より彼等は、倫理や常識が通じる相手じゃない。
頭ではそう理解していたつもりだったが、どうにも遣り方無い憤りが口を突いて出る。
「どうして、そこまでして?」
「千里さんが向坂家の熱心な信徒で、しかも霊媒体質だったからさ。」
ボクの問いに答えたのは、一慶だった。
「奴等は、霊障に悩んでいる千里さんが、定期的に玲さんの浄霊を受けている事を知っていた。そこで、彼女を『刺客』として利用したんだ。」
「刺客…??」
テーブルに突っ伏していたおっちゃんが、ムクリと起き上がって言った。
「その痣は、くちなわ紋って言うんだ。」
「くちなわもん…?」
「あぁ。薙にも話したよな、《鈴掛一門》の概要は。これは、奴等特有のテクニックだ。敵は、プロ中のプロだからな。仕事は抜かりなくキッチリこなす。霊の気配まで、跡形も無く消し去ってしまうという念の入れようだ。俺達六星ですら、気付かない事もある。」
──凄い。そんな事が出来るのか?
それに…権威有る医師が、鈴掛一門の行者だったなんて!
「何だか…怖い。」
「そうだね。医師の仮面を被って、命を自在にコントロールするなんて…一番、怖い行者かも知れない。」
祐介は、考え込む様に長い指で顎を捉えた。
「千里さんのオペは、九鬼医師が自ら執刀を希望したものだったらしい。客員教授となって暫く現場を離れていた彼が、自分から執刀を申し出るなるなんて不自然極まりない。恐らく九鬼は、最初から千里さんを入院させる目的で、掛り付けの医師に大学病院でのオペを勧めたんだろう。」
確かに。千里さんを手元に置いておけば、いつでも《くちなわ紋》を打ち込む事が出来る。
職権濫用も甚だしいが、元より彼等は、倫理や常識が通じる相手じゃない。
頭ではそう理解していたつもりだったが、どうにも遣り方無い憤りが口を突いて出る。
「どうして、そこまでして?」
「千里さんが向坂家の熱心な信徒で、しかも霊媒体質だったからさ。」
ボクの問いに答えたのは、一慶だった。
「奴等は、霊障に悩んでいる千里さんが、定期的に玲さんの浄霊を受けている事を知っていた。そこで、彼女を『刺客』として利用したんだ。」
「刺客…??」