「うん、メイクの所為かと思ったけれど…今日は、随分顔色が好いね。体調も問題無いようで安心したよ。しかし…馬子にも衣装とは、良く言ったものだ。今日のキミは大人っぽくて、とても魅力的だよ。これなら、充分に僕の射程距離内だ。式典なんかすっぽかして、このまま何処かに連れ込んじゃおうかな?」

 また…直ぐにそういう冗談を言う…。

『女に不自由した事が無い』と、噂には聞いていたが、何もこんな時に本領を発揮しなくても良かろうに…。

 やはり、祐介は要注意人物だ。

褒めるタイミングと云い、計算された微笑みと云い…明らかに、女性の扱いに慣れている。

 百戦錬磨の危険な香りに少々たじろぎながらも…ボクは、巫山戯た誘いをキッパリと拒絶した。

「その手の悪巫山戯は、やめてくれない?それから、馬子にも衣装は余計だよ。然り気無く馬鹿にしているでしょ?」

「そこまで気が付いていたとは、キミもなかなか賢いじゃないか。…と、ん?? これは…」

 祐介が、ふとボクの髪を掻き上げた。
耳に光るダイヤのピアスを凝視する。

「ダイヤのピアス…か。」

 それから、意味深長な眼差しを傍らの遥に投げる。当の遥は、澄まし顔で舌を出していた。

「やるね、遥。」

「ふふん、先手必勝や。俺は常にポールポジションを目指す男だからね。ライバルは、早目に抑えとかな。」

「おや、宣戦布告かな?いい度胸だね。受けて立つよ。」

 一体…何の話をしているんだ!?
二人の間に激しい火花が散っている。