全ての支度を終えて、遥と共に母屋へと向かう。広過ぎる控室には、既に着替えを済ませた一慶と祐介──そして、二日酔いで死に掛けている孝之のおっちゃんが待っていた。

 大きな座卓を囲み、何やら深刻な様子で、額を突き合わせている。

…何をしているのだろう?

 覗き込もうと近付いた途端。祐介が此方を振り向いて、ふわりと魅惑的な笑顔を作った。

「おや、支度が出来たんだね。とても綺麗だよ、薙。」

「あ…りがとう。」

 臆面も無くそんな事を言うので、ボクはすっかり出鼻を挫かれてしまった。気障な台詞も、当り前の様に口に出来る辺りが、俄然信用ならない祐介。

きっと、相手が女性なら、誰にでもそういう浮薄な事が言えるのだろう。危ない危ない。ペースを乱されない様、気を付けなくては…。

 ──それにしても、である。
先程から、やけに室内の空気が重い。
やはり、何かあったのだろうか??

話に割り込むタイミングを失って立ち尽くしていると、不意に祐介が近付いて来て、ボクを覗き込んだ。

頬に触れた指先の冷たさに、思わず肩を竦める。

 すると…