涙で崩れたメイクを手早く仕上げながら、遥は、こんな話をしてくれた。

「これから薙は、当主となった証として、魂に『法名』を打ち込まれる。《金の星》の当主はね、代々 《金剛》という名を相承するんだよ。」

「金剛…ボクが?」

「そうだよ。地球上、最も硬い天然石であるダイヤモンドは、経典の中にも度々登場して、『堅固な信心』に例えられる…。薙はね。俺達にとって、唯一無二のダイヤモンドに成るんだ。式典が終わったその瞬間から、正式に《金剛首座》を名乗るんだよ。」

 金剛首座──唯一無二のダイヤモンド。

そう言えば…以前から何度か、そう呼ばれる機会があった。だけど、そんなに深い意味があったなんて、考えてもみなかった。

 遥に依れば──。

六星一座の当主と四天は、先祖代々、定められた『名』を襲名して行くのだという。

既に当主に就任している火邑烈火は、法名・紅蓮を受け継ぎ、同時に、首座の補佐役として『左近』の大役を務めている。

同じく篝も、法名・槐(エンジュ)を相承していた。

 実名と法名──この二つ名を持つ事を許されて、初めて、先祖伝来の法術が自在に使える様になるのである。

ボクが金剛を継ぐ時…。

蒼摩は法名・応龍(オウリュウ)を、瑠威と瑠佳は、二人で法名・疾風(ハヤテ)の名を継ぐ事が決まっていた。

 親から子へ、子から孫へと承け継がれてゆく命のバトン──そして。

それを象徴するのが、六星一座の法名なのである。