密かに顔色を無くすボクを他所に、紫は当時を回想しながら言う。

「付き合って欲しいって言い出したのは、マイちゃんの方だったんだ。最初は、どういう事なのか意味が解らなくて…マイちゃんの言う通りにしていた。その内に、『付き合う』という意味が解ってきた。」

 何、意味が解った…だと!?
それはつまり、彼等は承知の上で──その…つまり、そういうあれで、あれなのか?!

「あ、ああああのさ…紫?それってつまり、二人で遊びに行ったりだとか…単にそれだけの事だよね?」

「勿論、遊びに行ったりもしたけど。キスもしたよ。それ以上の事も…」

 ──キス以上。

駄目だ、目眩がしてきた。
二人がそういう関係だったなんて…。

 いや。恋愛は個人の自由だ。
理性では、そう思うのだが…。色事に免疫の無いボクには、あまりにもハードルが高過ぎて、附いて行けない。

 出来れば知りたくなかった二人の過去。
なのに紫は、何でも無い事の様に話を続ける。

「そりゃ最初は、びっくりしたよ。凄く痛かったし、何をされているのか自分でも良く解らなかった。だけど回数を重ねる内に、段々…」

「解った!! 解ったから、その先は…!」
「薙?」

 …もう続きを聞く勇気がない。
両手で耳を塞いだボクを、紫は怪訝に覗き込んだ。

「どうしたの?物凄く顔色が悪い。俺…何か気に障る様な事した??」

「ごめん…ちょっと目眩が…」

「本当に?? 大変だ、どうしよう?! 何処かで休もうか?ごめんね、気が利かなくて。『無理させちゃいけない』って、今も隆臣に言われたばかりなのに…」

 心配そうにボクを支える腕は、意外に逞しい。やはり彼は男性なのだ。

解ってはいたが、このタイミングで思い知らされるのは少々キツい。もう駄目だ、気が遠くなってきた…。