そう言うと。苺は、二つ目のサクランボを、パクリと頬張った。

 ボクは複雑な面持ちで押し黙る。
心の呟きを聞かれているのだと、頭では解っていても…やはり、こんな風に言い当てられるのは、あまり気持ちの良いものじゃない。

「よし、じゃあ…祐介の意見を採用して、順番に自己紹介でもするか?左回りだぞ、左回り!」

 おっちゃんが出し抜けにそんな事を言ったので、里芋の煮付けを食べていた一慶が、グッと咽を詰まらせた。

ゲホゲホと激しく咳き込んでいる。
ボクは思わず、その背を擦った。

「まずは俺だな。…えー、俺は甲本孝之。46歳、既婚!趣味は飲酒!歌って踊れて首座代理もこなせる、存外器用なチョイ悪親父だ。以後、よろしく!」

 おっちゃんは、上機嫌で自己紹介した。
顔が赤い。酔っている。いつの間にか、かなり呑んでいた様だ。

それにしても、チョイ悪とは何だろう?
死語だとは思うが、意味が良く解らない。

「よし次!お前だ、いち!行け。」
「───。」

 漸く人心地着いた一慶が、不機嫌に顔を上げる。

「俺はいいよ。遠慮する。」

「駄目だ。例外は認めねぇぞ。これは首座代理命令だからな!おら、サッサと自己紹介する!!」