篝の部屋を出て直ぐに、ボクは一慶の後を追った。勿論、先程の件の誤解を解く為だ。だが、既に其処に彼の姿は無い。

…何処へ行ったのだろう?
相変わらず足が速い。いや、長いのか…
くそー。いちいちコンプレックスを刺激する人だ。

 宛てもなく彷徨(ウロツ)いていると、母屋の回廊で偶然、遥に出会(デクワ)した。

「薙、良かったぁ!探していたんだよ、何処に居たの?」

遥の笑顔が眩しい。
何故か後ろめたさを覚えながら、ボクは答えた。

「か、篝の部屋に…。」
「今までずっと??」
「うん…つい、話し込んでしまって…」

「ふぅん。女の子同士、仲が好いんだね。歳も近いし、尚更かな?」

「そ、そうそうそう!歳も近いしね、歳も!」

「??…うん。どうしたの、やけに元気だね。それで?此処で何をしていたの?? キョロキョロしちゃって…もしかして、また道に迷っちゃった?」

「遥を探していたんだ…その、一慶に言われて…」

「そうなの?良かった、会えて。じゃ早速行こうよ。」

 ニコニコと上機嫌の遥は、ボクの肩を抱く様にして玄関に向かった。そう云えば…『デート』の約束をしていたのであった…。

何だか今日は、色々と間が悪い。
状況に流されっ放しだ。

 結局、一慶の誤解を解く事も出来ないまま、ボクは、遥の愛車で出掛ける事になったのだった。