そんな事を考えていたら、不意に篝が顔を覗き込んで来た。

「祐介さまが、何か?」

「あ、いや…何でも無いよ。あのね。以前、君に質問された事があったけど、覚えているかな?」

「はい、覚えています。」

 以前。篝はボクの元を訪ねて、こんな質問をした。

『私は、当主に向いていますか?』
『女は当主として認めて貰えないのでしょうか?』

 縋がる様な必死な目で訴えてられて…正直、ボクは返答に困ってしまった。自分自身、当主となる自覚が無かった所為もある。

だから、答えをずっと先送りにしていた。
だけど、今なら言える事がある。

「遅くなったけれど、あの時の質問に答えたいと思って…来たんだ。」

「はい。」

 篝は、膝の上に両手を揃えて真っ直ぐにボクを見詰めた。

求める視線…。
ボクは、彼女のこの真摯な眼差しに誠実でありたい。

「結論から云うよ。ボクは、君こそ《木の星》の当主に相応しい人だと思う。」

「…え?」

「君には、人の上に立つ為に絶対必要な『力』と『覚悟』と『勇気』がある。ボクが認めた、たった一人の《木の星》当主だ。だから『女だから』とか…そんな風に自分を卑下して欲しくない。寧ろ、『女だからこそ』出来る事が、ボクと君にはあると思うんだ。」

 篝は、大きな瞳を、ますます大きく見開いてジッとボクを見詰めた。

「ボクには、君が必要だ。《木の星》の当主として、これからもずっと側に居て、力を貸して欲しい。」

「首座さま…」

 頭を下げた途端、篝が飛び付いて来た。

「嬉しいっ!」
「わ、ちょ…っ!?」

「私、一生付いて行きます!生涯、首座さまに添い遂げますっ!!」

「そ、添い遂げる──!?」

「はい!私、こんな熱烈な告白、生まれて初めて…!! 感動しました!」

 え、あれ?
何やら、話が妙な方向へ──。
篝の目は、潤んでハート型になっている。
これは、まずい。言葉選びを間違えたか?

篝は、派手に勘違いしている様子だ。
違う…そういう意味ではない!