「篝、体調はどう?」

「首座さま!」

 その日の昼下がり…。
西の対の客室に、篝を見舞いに行った。
蒼白だった肌には、ほんの少し赤味が差していて、確実に快方に向かっている様に見える。

「大丈夫です。祐介さまに良くして頂きました。有難うございます。わざわざ来て下さるなんて…。」

 篝は掛け布団を上げて身を起こすと、ボクを向いて、キチンと正座し直した。健気に笑う顔が愛らしい。

 だけど、気丈に振る舞って見せている分、その姿はどこか儚く危うかった。ボクは思わず彼女の肩を支える。

「急に起きちゃ駄目だよ。まだ寝ていないと…ね?」

 優しく窘めると、篝は薄く笑って首を横に振った。

「ご心配ありがとうございます。でも本当に平気なんです。今日は特に体調も好くて…」

そう言われても、ボクは未だ心配だった。

「無理しないでね。ちゃんと安静にして、祐介の言う事をきかないと…」

 『お仕置きされちゃうよ』──そう言い掛けて、ふと言葉を飲み込む。もしかしたら、『あれ』は、ボクだけにする意地悪なのだろうか?

有り得る──否。
寧ろ、そっちが正解かも知れない。