「えぇ。英国のメイドをイメージしたの。今度の学祭に出品するのよ。アンタが着ているものは、その試作品。なかなか良い雰囲気よね??」

 高々と結い上げたツインテールの髪を、パサリと背に払うと、満足そうにボクを見て笑う苺。

 …成程、そういう事か。
確かに、苺がデザインした服を拒否する事など出来ない。氷見のアドバイスを聞いて措いて正解だった。

 それにしても、服飾大学の学祭か。

いいなぁ、愉しそう。
もう、そんな季節なのか─…。
道理で苺も、気合の入ったドレスを着ている。

大きなリボンがふんだんにあしらわれたゴシック風のワンピースを、当前の様に着こなす度胸は、とても真似出来るものじゃない。

度胸に掛けては、ボクも負けてはいないつもりだったが、この領域には、なかなか踏み込めない気がした…。

 様々、思いを巡らせていた…そこへ。

遥が飛び切り明るい声で、ボクを呼んだ。
自分の隣の席をパタパタと叩いている。

「薙。ここ座ってよ、俺の隣!」
「…うん。」

 風通しの良い下半身を気にしながら、ギクシャク歩いて席に着く。その途端、遥がニッと笑ってボクの耳元に囁いた。

「ねぇ。この後、デートしない?」
「へ??」

…嘘だろう、この格好で?

返事に困ってパクパクしていると、遥は『決まりだね』と言って、予定を決めてしまった…。