…あうぅ。膝から下がスースーする。

スカートを履くのは、高校を卒業して以来だ。当時は『制服だから仕方なく』着ていたけれど…

 どうして今更、こんな格好をしなければならないのか?いっそ、屈辱的ですらある。

「でも…着ないと苺に怒られるし…」

 思わず洩れた溜め息に、氷見がクスッと忍び笑いを漏らした。

「とても良くお似合いですよ?」

 氷見は、そう言ってくれるけれど、この激しい違和感は如何(イカン)ともし難い。

ボクは生まれつき、スカートが似合わない体型なのだ。それは、誰より自分が一番良く知っている。なのに…

 苺が用意してくれた服は、ブルーグレイの清楚なワンピースだった。丸みを帯びた白襟と、胸元のボタン以外に、無駄な装飾は一切無い。

肩口が少し膨らんだパフスリーブが特徴的で、シンプルだけど品は良い。

 修道女を思わせるシックなデザインが、今の時代には、却って新鮮に映る。フリルやレースやリボンが無いだけ、随分マシだが…ワンピースなんて面倒なものは、生まれて此の方とんと御縁が無い。

 そもそも、背面にファスナーがあるという時点で、ボクの守備範囲外のアイテムだ。