夕暮れに沈む長い回廊を…ボクと一慶は、全速力で駆け抜けた。何故か手は繋がれたまま、まるで引き摺られる様に暗がりを突っ走る。
そうして辿り着いたのは、本堂の最深部…『奥の院』と呼ばれる小部屋だった。窓は無く、内装の全てが白木と漆喰とで造られている。
甲本家が代々守っている秘仏や秘宝の類が納められた、特別な部屋だ。いつもなら、厳重に鍵が掛けられている筈なのだが…。
「い…っ、いいの??勝手に…入って?」
弾む息の下、やや過呼吸気味で訊ねると、一慶は鼻白んだ様にボクを見下ろして言った。
「良くない。親父にバレたら半殺しだ。」
半殺し──!?
いや。流石に、そこまで鬼畜じゃないだろう。
彼特有の冗談はともかくとして、だ。
これだけ走ったのに、全く息が上がっていない一慶の持久力には、つくづく驚かされる。汗一つ掻いていない。
対して。なかなか呼吸が整わないボクは、息も絶え絶えに訊ねた。
「な…なんで、こんな所に…入っ、ちゃったの?怒、られる…おっちゃんに…」
「なんでって、お前…あの状況下で、あれこれ考えている余裕があると思うか?」
そうか。流石の一慶も、ギリギリの逃亡劇だったわけだ。──それにしても、である。
「何、さっきのアレ。生霊って?」
「あれか?特に意味は無い。奴等の気を逸らす為に言ったデマかせだ。」
「……」
「遥は今、爺の呪いに掛かっている。鍵爺の影をチラ付かせれば、必然的にああなる。ちょろいもんだ。」
「…………。」
ボクは、半眼を眇めて言い放った。
「一慶の意地悪。」
「あぁ、良く言われる。」
いや、そこで肯定されても──。
そうして辿り着いたのは、本堂の最深部…『奥の院』と呼ばれる小部屋だった。窓は無く、内装の全てが白木と漆喰とで造られている。
甲本家が代々守っている秘仏や秘宝の類が納められた、特別な部屋だ。いつもなら、厳重に鍵が掛けられている筈なのだが…。
「い…っ、いいの??勝手に…入って?」
弾む息の下、やや過呼吸気味で訊ねると、一慶は鼻白んだ様にボクを見下ろして言った。
「良くない。親父にバレたら半殺しだ。」
半殺し──!?
いや。流石に、そこまで鬼畜じゃないだろう。
彼特有の冗談はともかくとして、だ。
これだけ走ったのに、全く息が上がっていない一慶の持久力には、つくづく驚かされる。汗一つ掻いていない。
対して。なかなか呼吸が整わないボクは、息も絶え絶えに訊ねた。
「な…なんで、こんな所に…入っ、ちゃったの?怒、られる…おっちゃんに…」
「なんでって、お前…あの状況下で、あれこれ考えている余裕があると思うか?」
そうか。流石の一慶も、ギリギリの逃亡劇だったわけだ。──それにしても、である。
「何、さっきのアレ。生霊って?」
「あれか?特に意味は無い。奴等の気を逸らす為に言ったデマかせだ。」
「……」
「遥は今、爺の呪いに掛かっている。鍵爺の影をチラ付かせれば、必然的にああなる。ちょろいもんだ。」
「…………。」
ボクは、半眼を眇めて言い放った。
「一慶の意地悪。」
「あぁ、良く言われる。」
いや、そこで肯定されても──。