案の定、ご機嫌斜めだ。
さっきの一慶と同じ顔をしている。

「ごめん…ボクのせい?」
「他に理由がある?」

……う。

「本当にごめん。嫡子審議会も、今日の裁定会も、結局ボクが滅茶苦茶にしてしまって…」

「そうだね。キミが居ると、僕らはまともに話し合いすら出来ないらしい。次から次へと、よくもまぁ…」

 冷たい視線が容赦無くボクを射る。
本当の事だけに、返す言葉も無い。
正座をしたまま小さくなっていると──

「責任を取ってくれないかな?」
「へ??」

 祐介は、感情が読み取れない顔でボクを覗き込んで来た。

「え、あの…責任って?」

 意図する處ろが解らない。
無意識に首を傾げた途端、彼の手がスイと延べられて、ボクの首筋に触れた。

「舐められたよね、ここ。」
「…あ、うん…?」

 そう言われて、ふと思い出す。

つい先程、天魔は篝の体を借りて、ボクの首筋を一舐めした。良く考えなくても、そうとう恥ずかしい事をされたというのに、その後のすったもんだで、すっかり忘れていた。

 恥ずかしい…。
あの行為のいやらしさを反芻して、頬がカッと熱くなる。

居堪れなくなって顔を背けると、途端に、祐介がボクの腕を引っ張った。

「えっ…あ!」

 グラリと体が傾いだ。

倒れそうになった處ろを、逞しい腕に支えられる。崩れた体勢のまま…気が付けば、ボクは祐介に抱きかかえられていた。

──と、次の瞬間。
首筋に、ツゥと生暖かい痺れが走る。
ボクは堪らずヒッと喉を鳴した。

 な…ななな??
祐介が…ボクの首筋を舐めた!?

「わぁっ!!」

慌てて飛び退くと、満足そうに笑う彼の顔が見えた。

「何するの、いきなり!?」
「何って…味見?」

 味見──味見とは!?

「…嘘だよ。天魔が舐めたところを消毒しただけ。」

 いやいや、それも違うだろう??
狼狽えるボクの様子を楽しむ様に、祐介はスイと顔を近付ける。

「おや?顔が赤いね。これは、いけない。もしかして、熱でも出たのかな??」

 そんな事を言いながら、自分の額をボクの額にくっつける。

顔!顔が近い、顔が──!!

「なっ…な、な、な!」
「静かに──篝が起きちゃうよ?」
「……っ!?」

 囁かれた途端、耳朶を甘噛みされた。
ぞくりと全身に痺れが走る。
あぁ、もう駄目…限界だ…。
頭がクラクラする─…