腰に回された手を引き剥がしながら言うと、遥は「ちぇっ」と口を尖らせる。

拗ねて見せても、駄目なものは駄目だ。
どさくさ紛れにも、程がある。

「…それで?向坂親子の様子は??」

 持ち前の切り替えの早さを発揮した遥が、唐突に真顔になった。

 今、ボク等の身の回りで何が起きているのか──概要は、氷見から聞いて把握しているらしい。

「でも、電話で話を聞いただけじゃ解らない事もあるからねー。俺、ちょっと真織さんの様子を見に行って来るよ。西の対に居るんだろう?」

 そう言って、スイと立ち上がる。

「じゃあ…ボクも。篝の様子を見に行くよ。」

遥の後に続いて立ち上がると、蒼摩と烈火も次々に席を立った。

「ご一緒して宜しいですか、遥さん?」
「俺も。真織の様子が気になるしな。」

 それを聞いた遥は、ここぞとばかりに眉を吊り上げて烈火を見た。

「別に良いけど。蒼摩はともかく、烈火も?雪でも降るんとちゃうか??」

「っせぇな!俺だって偶(タマ)には、そういう気分になるんだよ!!」

「へぇ?自分大好き烈火君がねぇ??天変地異の前振れやろか?」

「いいから行けよ、サッサとよ!」

 遥と烈火がどつき合いながら出て行った後を、蒼摩が少し遅れて退出する──と。不意に足を止めて、肩越しに振り向いた。